会長挨拶

謹啓 春爛漫の候、ますますご清栄の段、心よりお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。さて、かねてより団体設立の準備を進めておりましたが、お陰さまでこのたび立ち上げの運びとなりました。これも皆様方のご支援とご協力の賜と心より感謝いたしております。

さて、振り返ること、約30年前の我が国には調査業の団体が4つございました。これら4つの団体がひとつとなって、昭和61年(1986年)日本調査業協会が設立されたのですが、この間、会員の意見が一枚岩にまとまらず、分裂を繰り返し、多くの同業団体が存在するようになって今日に至っております。

ご存知のように、探偵業・調査業者とは、興信所や探偵事務所、または調査会社などを指します。平成19年(2007年)に「探偵業の業務の適正化に関する法律」が施行されるまで、法的には探偵業者の業務は明確にされていませんでしたが、この法の施行により、探偵業務について「他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務」と探偵業法第2条第1項で定義されています。

この探偵業法第4条により、探偵業は公安委員会への届出制となり、届出をして欠格事由に該当していなければ、公安委員会から「探偵業届出証明書」が交付されるようになりました。届出制にある現在は、開始届をいったん提出さえすれば廃業届を提出しない限り、探偵業を廃業しても公安委員会の名簿には登録されたままの状態となっているため実際の業者数や実務内容などは把握されていない、いわばブラックボックスのような状況が続いています。

直近の「消費生活年報2017」(国民生活センター) によると、探偵業に関する苦情件数は7,649件(前年度比178%)にのぼり、アダルト情報サイトなどとのトラブル救済をうたい、法外な解約金を請求する探偵業者等に関する苦情相談の増加が発表され、警察当局ではワンクリック詐欺や未公開株、出会い系サイトなどによる詐欺被害に遭われた方を対象に、詐欺被害の解決・返金をうたう探偵業者が暗躍していることの注意を広く呼び掛けるなど、残念なことに調査業にまつわる悪徳業者が後を絶っていません。

本来、会員の質的向上と倫理の徹底を図り、消費者保護の立場で苦情処理を行うなど、常に探偵調査業界の健全化に努めなければならない団体がいまでも分裂を繰り返している状況を冷ややかに見ている公安委員会は、統制が取れない団体に失望し、探偵業を規制する動きすら散見されるようになっています。このような状況は、消費者の安全と権利利益の保護、そして社会への貢献活動を続けていらっしゃる、健全な探偵業者の皆様にとられましても看過できることではありません。まして探偵業界全体にとって何ひとつ利益になることはなく、黙認しているだけでは業界の将来を明るいものにすることができません。

そこで、この閉塞した状況を打破するために、法の施行から11年目を迎える「探偵業の業務の適正化に関する法律」における「届出制」を「許可制」へと法を改正すべく、早期実現を求めて強く呼びかけることにいたしました。法を改正するためには、統制が図れているとは思えない探偵業界を再編するために 今一度、団体を統一し、志をひとつにした会員の融和を図っていくことが今後はますます重要になってくるものと考えています。

あのシャーロック・ホームズの故郷である英国では、優秀な私立探偵事務所が多く存在していますが、探偵業に免許制度が導入されたのが2014年になります。我が国でも、公安委員会に対して、対等な立場で意見を通そうとするには、他団体の一致結束が不可欠と考えています。

今後、探偵業者の総意見として真摯な要望を挙げる団体を目指し、皆様方のご期待に添えられるよう日々精進いたす所存でございます。何卒、倍旧のご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

謹言

平成30年4月 吉日

北海道総合調査業協会
会長 山田 聡